岡田裕子先生をお招きしての埼玉弁護士会の研修『難しい当事者への対応方法』を受講してきました。zoom参加も可能だったのですが、絶対に会場で受講したかったので、浦和の埼玉弁護士会館に赴いて受講してきました。
岡田先生は、元弁護士(※)・臨床心理士・公認心理師で、『難しい依頼者と出会った法律家へ パーソナリティ障害の理解と支援』(2018、日本加除出版)という本を書かれた方です。このご本や岡田先生については、以前に「法律専門家待望の書」という記事で書いたことがありました。
※ 元弁護士というのは、弁護士登録を今はしていないという意味です。日本の法律では弁護士登録をしていないと弁護士と呼ばれないし名乗れないので(弁護士法8条)、登録をやめると、弁護士となる資格を有する人、元弁護士の人、といった表現になってしまいます。
岡田先生のお話を拝聴するのは、2012年の法テラス内の「パーソナリティ障害対応研修」、2018年の読書会「「難しい依頼者~」を書いた経緯・そして次のこと」に続いて3回目です。
研修の内容は『難しい依頼者と出会った法律家へ』のバージョンアップ版で、ご本からバージョンアップした点は、(1)原因論の説明が増えたこと、(2)ご本ではパーソナリティ障害の類型から説明しているが、法律家は一般に相手がどの類型の人なのかはわからないと思われるので、状況論(難しさを感じる状況。話が長く問い合わせが頻回であるとか)から入った方がよいのではないかとの考えにシフトしつつある、という点とのことでした。また、パーソナリティ障害の類型の説明に著名人の例を挙げておられました。これは、岡田尊司 『パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか 』(2004、PHP研究所)でされていた方法でもあります。
岡田先生は、ご本でも、お話でも、慎重に「難しい当事者」の場合に範囲を限定されているように感じます。
それは、岡田先生が弁護士一般より専門的知識があるのは難しい当事者についてで、難しい当事者でない場合は弁護士一般は対応ができていることになっているし先行の研究もあるのだ、ということなのかな、と拝察しています。
しかし、心理学も修められた元弁護士の先生が当事者対応一般についてもお話し下さったら、ぼくら後輩にはとてもありがたいのではないかと思います。
そういう気持ちもあり、質疑の時間に、「カウンセリングマインドを持つことと心理カウンセリングをすることとは違う」「心理カウンセリングにならないようにすべき」というお話に関して、持つべきカウンセリングマインドの内容としてなにか教えていただけることはありませんか、という質問をしたところ、たくさんのお答えをいただくことができました。
また、講義のあとには、自分は大学で心理学を勉強したり産業カウンセラーの養成講座で傾聴のトレーニングを受けたりして、現在の業務に大変役立っていると感じているのだけど、心理カウンセリングにならないようにすべき、という点とどう噛み合わせればよいか、またこれからどういう勉強をしたらよいと思われるか、というご質問をして、親身にお答えをいただきました。
岡田先生が敢えてご本などに書いておられないことだと思われるので、ご回答の内容をここには書けませんが、大変ありがたく勉強になりました。
ぼくは、心理学やカウンセリングを勉強してみて、それまでは法律という優位な枠組みを身に着けてしまっていたために(相談者や当事者ご自身の持つ枠組みではなく)法律の枠組みで外から見てどうなのかという把握になりがちだったのではないか、と反省しています。
岡田先生の研修と『難しい依頼者と出会った法律家へ パーソナリティ障害の理解と支援』は、(法律的に外から見てではなく)当事者の方の立場で見て、当事者の方の中でどういうことが起きているのか、という視点を持つきっかけを頂いた大切なものなので、ここでも再度、おすすめしたいと思います。